新ビッグ3の一つである欧米メーカーが世界最大市場である中国において、ある大きな戦略的転換を決断した。(IPC Asia pacific)
自動車産業のすべての企業では、ISO9001に加えTS16949の認定が必須とされている。
このプロセスにおける、はんだ付システムの評価は、AIAG(全米自動車産業協会)が提唱するCQI-17に基づくこととされている。
そして、そのCQI-17の文書によると、はんだ付評価の詳細は、IPC標準(*1)を参照することと指示されている。
*1: 参照文献としてのIPC標準は、J-STD-001、IPC-A-610、IPC-7711/21の3つ
過去数年に渡り、中国市場で1、2位を争う欧米メーカーでは、ある悩みを抱えていた。それは、サプライヤーだけでなく、自社も含めてCQI-17の準拠とIPC標準の正しい理解・運用をどう確認するか、ということだ。中国市場は、土地としてだけでなく、サプライヤーの数としても広大なため、それらを確認するための十分な能力とリソースが圧倒的に不足していた。
そのため、CQI-17への準拠と品質の安定化のために一つの決断を行った。それは、グローバルスタンダードを基礎とした受入・納入双方における品質に対する理解の統一化と監査プロセスの選択と集中である。
このメーカーが決断した新しい監査プロセスは以下の通りとなる。
1) サプライヤーの品質監査を行うため、自社においてIPCの認証トレーナーを招き、IPC標準のトレーニングを行う
2) 定期的に開催される、サプライヤーを対象に行われる「チェーンミーティング」で、IPCによる定期講演を実施
3) CQI-17で参照されているIPC標準の認証資格の取得を要請
4) サプライヤーのステータスレビューにおいて、IPCトレーニングまたは、IPCによる監査を受け、合格していなかった場合、このサプライヤーへは、改善要求を促し、それでも合格しない場合、受入を停止する。
5) IPCによるトレーニングと監査の終了後、CQI-17(AIAG)に基づいた監査を自社で実施
6) 最終ステップで、IPC及びCQI-17でカバーしていない自社規格による監査項目にて評価を行う
このメーカーでの、大きな転換とは、グローバルスタンダードの適用により、管理すべき自社規格の明確化とスリム化である。
全てを自社で賄うのではなく、最初のステップは、IPCのトレーニングと監査を必須とし、第2ステップでCQI-17、そして最終ステップとして自社規格による監査評価と段階付けている。
そして、サプライチェーンにおいて、基本事項として受入・納入双方でIPC標準を適用し、認識の統一化を図る。多岐にわたるサプライヤーへは、IPCの活用によって、工程改善を促し、サプライヤーの管理コストを削減させる。その結果、サプライチェーン全体における品質リスクを軽減させ、全体コストを削減させていく考えだ。
この戦略的決断の最終目的とは、メーカーとサプライヤーの双方に、コスト減と品質の安定化という利益をもたらし、激化する世界の競合企業とIPCのグローバルスタンダードを活用して競争するということにあると言う。